こんにちは!マイです!
ハイどうも、ひげマスターです。
以前ご紹介した映画『パシフィック・リム』の記事にて続編の『パシフィック・リム:アップライジング』は駄作であると断言しましたが、本記事ではあの映画のどの辺がダメだったのかを詳しく書いていきます!
基本情報
原題:Pacific Rim: Uprising
製作国:アメリカ
公開年:2018年
ジャンル:SF、アクション
監督:スティーヴン・S・デナイト
出演:ジョン・ボイエガ、スコット・イーストウッド、ジン・ティエン、ケイリー・スピーニー、菊地凛子、バーン・ゴーマン、アドリア・アルホナ、チャーリー・デイ、新田真剣佑
上映時間:111分
概要:2013年のヒット作『パシフィック・リム』の5年ぶりの続編。前作のギレルモ・デル・トロに代わり、ドラマ『デアデビル』を手掛けたスティーヴン・S・デナイトがメガホンを取る。
あらすじ:人類と怪獣の戦いが終結した10年後、人類を救った英雄ペントコストの息子ジェイクは巨大人型兵器イェーガーのパイロットだったが、除隊後は盗みや転売をしながら放蕩生活を送っていた。小型のイェーガーを自作していた孤児の少女アマーラと共に逮捕されたジェイクは、義姉で元パイロットのマコから無罪放免と引き換えにパイロット訓練生の教官に任命される。
『アップライジング』のここがダメ!
まずは本作のダメな点を一つ一つ挙げていきます。
重厚感がない
前作の最大の魅力は、イェーガーと怪獣の重厚感溢れるバトルでした。
近年のロボットもので代表的な作品は「トランスフォーマー」シリーズですが、あれはロボットが車やジェット機に変身しながら戦う、非常にスピーディーなバトルが展開するシリーズでした。登場するロボットは人間が操縦するのではなく「機械生命体」であり、サイズも5〜10mほどの個体が多いです。
対してイェーガーや怪獣は高層ビル並みの巨大さで、100m近いサイズ感となっています。それほどの質量を持った物体が動くのですから、ピョンピョン跳び回ったりスライディングしてみたり、そうそう軽快に動き回れるはずがありません。
引用元:IMDb
前作はスピード感やスタイリッシュさを犠牲にしても観客に重さを感じさせるところに、他のロボットものにはない独自性があったのです!また、それこそが日本の怪獣映画やロボットアニメへの愛情の表れでもありました。
本作でやっていることはトランスフォーマーとほとんど変わらないのに、サイズだけが大きすぎるために重厚感が伴わず、軽くてスカスカしたアクションになってしまいました。
引用元:IMDb
時代設定が前作から10年後ということでイェーガーの建造技術が進歩し、その結果スピード感がアップしたとも考えられます。ですが、そのスピード感は本当に観客が求めていたものだったのでしょうか?
前作の重厚感を評価した観客はスピード感など求めていなかったでしょうし、逆に気に入らなかった観客はそもそも続編に興味を示さないでしょうから、これはもう製作陣の意向とファンの期待が噛み合わなかったと考えるしかなさそうです。
前作のキャラクターの扱いが雑
マコがあっさり死亡
前作のヒロインでパイロットだったマコは一線を退き、PPDC(環太平洋防衛軍)の事務総長として登場しますが、ジェイクとネイトが乗る「ジプシー・アベンジャー」と怪獣の脳が操る「オブシディアン・フューリー」の戦闘に巻き込まれる形で、乗っていたヘリが墜落して死亡します。
引用元:IMDb
彼女の死によって主人公ジェイクが奮起するという意味では重要なキャラクターですが、大した見せ場らしい見せ場もなく、前作のヒロインとは思えない死に様でした。
イェーガー同士が戦っている間にヘリが逃げる時間は十分あったように見えたんですけど...
そもそも敵は何が目的でシドニーに現れたのかね。
ニュートがまさかの悪役に
前作のコメディリリーフであるニュートとハーマンの博士コンビが再登場!お馴染みの掛け合いで和ませてくれるかと思いきや、本編後半でニュートがプリカーサーに洗脳されていることが判明します。
前作でニュートは怪獣の脳と単独でドリフトし、そこから得た情報でローリーたちを手助けしました。更にハーマンと2人同時でもドリフトを敢行しましたが、それによって悪夢にうなされるようになったハーマンに対し、ニュートは悪夢どころか洗脳されて怪獣を呼び寄せる手引きをしていたのです。
引用元:IMDb
この展開は意外性のあるものでしたが、コメディ担当のキャラクターをシリアスな形でストーリーに介入させたことでギャグが笑えないものになり、ストーリーのシリアスさをも損なうことになりました。
そもそも、なぜ前作の時点で洗脳されていなかったのかも不明です。
前作のギャグシーンを見返したときに「でもこの後洗脳されるんだよね」って思っちゃいました〜
前作の価値をも落とす大悪手!いくら何でも反則だよ...
ローリーとチャウは名前だけ登場
前作の主人公ローリー役のチャーリー・ハナムとハンニバル・チャウ役のロン・パールマンはスケジュールの都合で降板したので、彼らの存在はセリフでほんの一言触れられるだけです。
もっとも続編を作るにあたって主要キャストが降板することはハリウッドでは珍しくありませんから、ナレーションで唐突に死んでいたことがアナウンスされる(いわゆる「ナレ死」)よりはマシだったのかもしれません。
ツッコミどころの数々
単なるロボットに過ぎない1人乗りイェーガー
前作と同じく神経を接続して操縦するイェーガーは単独では負担が大きすぎるため、2人のパイロットが操縦します。前作には中国人の三つ子が操縦する3人乗りの機体も登場しましたね。
今回は1人乗りの小型イェーガー「スクラッパー」が登場するのですが「小型だから1人でも大丈夫」というセリフがあるだけで、どう大丈夫なのかの説明はありません。また神経を接続するためにパイロットは特殊なスーツを着用するはずですが、劇中でスクラッパーの操縦をする人間は薄着に特殊なグローブを付けただけの状態です。
引用元:IMDb
この点に関しては「小型だから神経への負担が少ないんだろうな」「小型だからグローブだけでいいんだろうな」と推し量ることは出来ますが、これではあまりにイェーガーの特徴がない上に最後は遠隔操作まで出来てしまい、単なるロボットに過ぎない存在となっています。
3人目が必要ない3人乗りイェーガー
パイロット同士が記憶や思考を同調させる技術を劇中では「ドリフト」と呼んでいますが、これが前作でも今作でも物語を展開する上で非常に重要な役割を果たしています。
登場するイェーガーの内の1機「ブレーサー・フェニックス」は3人乗りの機体で、当然3人がドリフトして戦う...かと思いきや、3人目はただの砲手!イェーガーの動きには何も貢献しません。いやいや、機械でやればいいでしょ!砲手に過ぎないのにパイロット感を出しているキャラクターも相当シュールでした。
剣を持っているのにキックで戦うイェーガー
重量級のブレーサー・フェニックスに対し「セイバー・アテナ」は作中最速を誇る機動力に優れた機体で、武器は2本の剣です。そのスピードを活かした剣技が炸裂する...かと思いきや、繰り出すのはなぜかキックばかり!いやいや、剣で戦った方が強いでしょ!
筆者は本作鑑賞時、「トンファーキック」のAA(アスキーアート)↑を真っ先に思い出しました。このAAはシュールなネタそのものですが、まさかハリウッド映画が同レベルのことをごく真面目にやってしまうとは...
目の前に敵がいるのにイェーガーから降りてしまうジェイク
マコ死亡シーンの直後、義姉の死で我を失ったとは言え、ジェイクは操縦を放棄してマコのもとへ駆け寄ろうとします。目の前にまだ敵がいるのに!一応、味方のイェーガーが運ばれてくるカットはありましたが...
ここで相棒のネイトが「待て!」と叫びますが、観客も一緒に叫びたくなること請け合いのシーンです。
「また巨大ロボか、工夫がないな!」からの超巨大怪獣登場
若い訓練生たちが操るイェーガーは、3体の怪獣相手に善戦します。それを現場で見ていた悪役ニュートは「また巨大ロボか、工夫がないな!」と言って、虫のような小型ドローンを大量に繰り出します。
なるほど、巨大ロボは小回りが効かないから小型ドローンにまとわり付かれたら対処が難しい...これは意外に手強い敵かもしれない!
筆者がそう思ったのも束の間、小型ドローンは「つなぎ」の役割を果たして3体の怪獣を合体させ、超巨大怪獣が誕生します!
引用元:IMDb
「また巨大ロボか、工夫がないな!」のセリフの直後に出すのが超巨大怪獣という2コマ漫画のような展開に脱力してしまいました。
合体してる間にパイロットたちが攻撃しないのはどうしてですか?
お約束ってやつじゃないかな。
東京と富士山の距離感がおかしい
最終決戦の舞台は東京!怪獣によって市民が次々と犠牲になるシーンの直後、いつの間にか市民の避難が完了していることを聞いたパイロットたちは怪獣に総攻撃を仕掛けます。
その東京決戦のシーンで、富士山が東京と横浜くらいの距離感で背景に映っています。いやいや、そんなに近いわけないでしょ!
引用元:IMDb
パイロットたちを圧倒した超巨大怪獣は富士山へ移動を始めますが、やはりというか、あっという間に到着してしまうのでした。
大気圏に再突入してもコックピットは無事
映画のクライマックス、富士山に突入することで火山帯を爆発させようとする怪獣に追いつくため、ジェイクは負傷したネイトの代わりにアマーラとドリフトし、ロケット推進機をイェーガーの手に溶接して大気圏外まで飛び上がり、そこから怪獣めがけて落下する作戦を実行します。
ただ、この作戦の直前にジプシー・アベンジャーの頭部は怪獣の攻撃によって損壊し、コックピットに風穴が開いた状態になっています。
その状態で大気圏への再突入。当然、大気摩擦による高熱で機体は赤く変色していきますが、なぜかコックピットには何の影響もないため、ジェイクとアマーラはピンピンしています。
引用元:IMDb
パイロットスーツのヘルメット部分に透明なシールドが貼られているような描写がありましたから、コックピットにも似たようなものが装備されていたのかもしれません。もちろん、特に説明はありませんでしたが...
新キャラが新キャラを育てるストーリー
本作には主人公のジェイクを含め、大量の新キャラが登場します。と言うより、前作から続投しているのはマコ、ニュート、ハーマンの3人だけです。
よって観客からしたら特に思い入れのないキャラクターであるジェイクやネイトが、更に思い入れのない訓練生たちを叱咤する姿を見せられることになります。
熱い言葉で訓練生を鼓舞するジェイク...でも観客は彼が教官の立場になるほどの実力を持った人物なのかもわかりません。登場人物の背景がわからないまま、設定だけが先走っているような印象を受けます。
また世代交代を思わせるストーリーでありながら、次世代のキャラクターである訓練生たちに魅力が乏しいのも問題です。準主役であるアマーラ以外、誰も印象に残らない...
引用元:IMDb
こういうSFアクション大作はCGが主役みたいなところがありますから、製作費を抑えつつCGの魅力を食ってしまわないような若手の俳優を主演に起用することが多いです。ただし若手ばかりだと画面映えしないので、上司や悪役にベテランの俳優を起用します。いわゆる「脇を固める」キャスティングですね。
本作には脇を固められるような(前作のペントコスト役イドリス・エルバのような)人気・実力のあるベテラン俳優がいません。よって若い新キャラがもっと若い新キャラを育てるという、感情移入のしどころが分かりにくい構成となってしまっています。
せめてローリーとマコが教官となって訓練生を育てるストーリーだったら、もう少しアツい展開も用意出来たのでは...
露骨な中国推し
これは2010年代以降のハリウッドを取り巻く環境による問題なので本作に限った話ではないものの、全編を通して中国への忖度に溢れた作品となっています。
前作公開後、製作会社レジェンダリー・ピクチャーズが中国の大連万達グループに買収されたことにより、2作目は中国資本によるアメリカ映画として製作されました。
まず中国人のキャラクターが司令官や社長など重要なポストに付いていて、特にシャオ産業の女社長リーウェンは映画の最後まで大活躍します。ニュートの策謀によって開かれた次空の裂け目を閉じるのも彼女、クライマックスに遠隔操作のスクラッパーで駆け付けてジェイクとアマーラを救うのも彼女です。
こうして重要キャラに国際的な知名度のない俳優を配置してしまったために、先述の「ベテラン俳優の不在」に繋がりました。
リーウェンは英語も喋りますがセリフの多くは中国語で、その部下として働くニュートも中国語で応対するばかりか、発音の悪さを指摘される始末。
キャラに奥行きを出すために外国語を織り交ぜるのは必要なこと(前作でも日本語で会話するシーンがありました)ですが、本作ではストーリーの進行において明らかに必要以上の中国語が出てきます。
引用元:IMDb
他にも訓練生の中では中国人のジナイが親切で紳士的なキャラクターとして登場したり、日本人やインド人のキャラが死亡したり、ジェイクが中国製チリソースのボトルにキスしたり...単独だと気にならないのに、作品全体が中国推しなせいでプロパガンダのように見えてしまいます。
スポンサーである中国人ウケを狙うってことは、ビジネスとしてはわかるんですけど...
観客からしたら、大人の事情が露骨に見えると萎えちゃうよね。
あえて『アップライジング』の良かった点を挙げてみる
ひどい出来とは言え、本作にも見るべきところがないわけではありません。
特別デザインのユニバーサル・ピクチャーズのロゴ
本作の配給を手掛けるユニバーサル・ピクチャーズのロゴは、イェーガーのコックピットを思わせる特別デザインとなっています。これがなかなかカッコいい。
引用元:IMDb
本編開始5秒で見られる本作のハイライトと言えるでしょう。
一部の新キャストと新キャラクター
ネイト役スコット・イーストウッド
ジェイクの相棒であるネイトを演じるのは巨匠クリント・イーストウッドの息子スコット・イーストウッドです。ワイルドなルックスは父親譲り!
引用元:IMDb
クリント・イーストウッドには8人の子供がいるそうですが、顔はスコットが一番似ているみたいですね。
眩しそうな目つきがお父さんそっくり!
ジュールス役アドリア・アルホナ
登場シーンは少なめでしたが、ジェイクとネイトが心惹かれる整備士ジュールスは抜群の美貌と色気を放っていました。
引用元:IMDb
演じたアドリア・アルホナはプエルトリコ出身の女優で、Netflix映画『6アンダーグラウンド』や「スパイダーマン」シリーズのスピンオフ『モービウス』に主要キャストとして出演している期待の若手です。
明るい場所でのバトルが見られる
前作のバトルシーンのほとんどが夜のシーンだったのに対し、今回は日中のシーンが多くなっています。
引用元:IMDb
CGを多用した映画にはよくあることなのですが、暗い方がCGのアラが目立たないので、CGにかかる予算を減らすために夜のシーンを多めに入れるのです。
製作費は前作の1億9000万ドルから1億5000万ドルに縮小していますが、それでも日中のシーンが増えたということは、その一因としてCG技術の進歩があったということでしょう。
内容はさておき、前作では見られなかった明るい場所でのバトルは本作の良かった点です。
駄作になったのは新監督のせいなのか?
前作には生粋のオタクであるギレルモ・デル・トロのこだわりと愛情がいっぱい詰まっていましたが、製作会社の買収などが起こっている間に監督のスケジュールが埋まってしまい降板に。
そこで新監督として起用されたのがドラマ『スパルタカス』『デアデビル』で知られるスティーヴン・S・デナイトでした。ドラマ界で一定の評価を受けた彼の手腕は、恐らく悪いものではなかったと思います。ただ、デル・トロ監督ほど怪獣やロボットへの造詣が深い人物かと言うと、それは難しいでしょう。
筆者の私見ですが映画監督は自分のこだわりを重視するタイプとスタジオの意向を遵守するタイプに分けられ、デル・トロ監督は前者、デナイト監督は後者だと思われます。
例えば『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』の監督ライアン・ジョンソンはファンからのバッシングに晒されましたが、ディズニーと揉めずに作品を完成させた手腕を買われ、新たな三部作の監督に内定しました。こだわりが強すぎると、監督はスタジオから仕事を任されないのです。
本作の製作にあたって、デナイト監督はデル・トロ監督のこだわりよりも中国企業の意向を優先する判断を下したということです。それが良いとか悪いとかではなく監督のスタイルの問題で、もしもデナイト監督がこだわりを重視するタイプだったら、また別の監督が起用されていたでしょう。
映画のクオリティを管理するのは監督ですけど、お金を出すのはスタジオでありスポンサーですもんね。
あんまり言いたくないけど、映画も結局はビジネスなんだよね。ファンとしては監督のこだわりが見たいところなんだけどなぁ。
まとめ
『パシフィック・リム:アップライジング』管理人レビュー
レビューサイトでの評価
Rotten Tomatoes
批評家のスコアは43%。一般のスコアは38%。
引用元:Rotten Tomatoes
IMDb
5.6/10で6点が中心。
引用元:IMDb